「絶対愛重するものは自然美である。自然美礼賛一辺倒である。山でも水でも石でも木でも、草木、言うにおよばず、禽獣魚介その他何でもござれで、皆が美しくてたまらない。工夫は細工ではない。工夫とは、自然にもっとも接近することだ」
「焼締めの素晴らしさを持っている備前焼こそ料理を最高に生かすと思うよ。それに、その日本一の陶土を活かすには、ざっくり造った陶板が一番だ」
「陶器は絵の描かれたものが大部分である。 ところが、少数ではあるが、絵の描いてない陶器が日本には縄文、弥生や、陶器とは言えないが埴輪がある。 これらに類似して、なんら絵をほどこさず、しかも、釉も掛けない陶器に備前焼がある。 無釉陶の中でも、群を抜いて美しいのが、この備前焼である。 古備前を見ても、またどんな陶器を見ても、人と時代の力で、秀れた陶器を数多く見るが、この備前焼の特徴は、なんと言っても、土そのものが世界に類なきものである。 土に変化があり、味わいがある。備前は火と土の微妙な関連によって、間然するところなき美をもたらす。
渋い奥行きのある色は、単なる手芸の域では、もはや出すことはできない。一にかかって作家の芸術的才能の問題である。 晩成期の仕事とされるこの備前焼は、腹芸そのものが、秀れた美を生む源泉となるのである。
この腹芸をすっかり失っている今の陶芸作家には、二、三を除いては、的確な陶器思考などあるはずもなく、わからず屋同士が、他愛もなく、その日暮しにおのずと酔生夢死を待つばかりという体たらくである。」
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